東海道本線元町駅 11:02

  
 
 
 
元町駅前には場外馬券売場があって、くすんだ色の服に身を包んだ老人が次々に吸い込まれてゆく。
1レース遊んでいこうかと出来心で入ってみたが、狭いビルで上層階に行かないと馬券売場がないらしい。面倒くさくなってすぐに出た。
 
ビルの中でベンチや階段に座る老人たちはむっつりした顔でスポーツ紙を眺め、ペンを走らせている。1レースに何千円と買う人は少なかろう。彼らはおそらく二、三千円の賭け金で一日を過ごし、酎ハイ片手におでんでも食べて帰路につくのだろうか。そういう休日の過ごし方は悪くない。
 
サラリーマンになりたての頃、競馬好きの上司の影響で、G1レースを中心に毎週馬券を買っていたときがあった。東京後楽園にある大きな馬券売場にも何度か行った。
 
競馬新聞を読むのは時刻表にも似ていて、データを比較して馬券を買うのは楽しいものであったが、儲かったことはまれで、ほとんど負けていた。僕はギャンブルに向いていないのである。
  
尾道市の郊外住宅地に場外舟券売場を作る計画があって、建設予定地の住民が反対している。
集まってくるのが若い人たちだったらそれほど反対も起きないだろうなと、薄暗いフロアにたむろする老人たちを眺めながら思う。

そうだ、いっそのこと市街地中心部にある総合スーパーの中に舟券売場を作ったらどうか。テナントが撤退してスペースは空いている。土日に中高生が遊びに来るような場所ではないから、青少年への悪影響もない。周辺の飲食店も潤うだろうし一石二鳥間違いなし。これから尾道に帰って市長さんに進言しよう。